ふらつかない

大学受験とかの名残。

<生きていること>とはどこにあるのでしょうか。<私>は<生きていること>に対して、輝かしい未来を与えようと、いつもそのために昼の時間を青空の下で費やしています。反対に、<生きていること>は<私>に時折、「耐えろ」と要請します。真夜中のどうしようもない息苦しさと流れゆく時間が摩擦するとき、その声が聴こえます。

芥川龍之介の遺稿の最終部は、<生きていること>から<私>に対する、異様に明瞭な呼びかけです。

僕 (一人になる。)芥川龍之介! 芥川龍之介、お前の根をしつかりとおろせ。お前は風に吹かれてゐる葦あしだ。空模様はいつ何時変るかも知れない。唯しつかり踏んばつてゐろ。それはお前自身の為だ。同時に又お前の子供たちの為だ。うぬ惚ぼれるな。同時に卑屈にもなるな。これからお前はやり直すのだ。

始まってしまったものは、終わるまで彼の姿を隠し通すのでしょうか...

(参考)

・『闇中問答』芥川龍之介